彫刻
昭和62年5月15日
福島県岩瀬郡天栄村大字牧之内字竜生
一木彫成
この聖観音菩薩は、一木彫成で、彫眼内ぐりなし、頭部は高髻を結い、鬢髮は耳の上をわたり、衲衣は偏袒右肩、両腕両足先きは別材はぎ合わせで、体幹部に比べて細く、見劣りがする。条帛の彫り浅く、裳や腰裳の折り返しにノミの力強さに欠けた感じはあるが、彫りは丁寧である。左手は蓮華でも持った構えをし、右手を胸前で五指を伸ばしている。
この観音菩薩は、体軀の肥満形、両手両和などの作風から修験宗関係の作仏で、地方仏師の作と思われる。製作年代は室町末期から江戸初期と考えられるが、伝説には、弘法大師が一本の槻の木で三軀の仏を刻み、一軀は湯本の馬頭観音、一軀は下郷町の小野観音、さらにもう一軀は当観音であるといわれている。また、観音像安置の厨子は立派なもので、製作年代も同時期と思われる。
なお、当地方は往古より馬産地としても有名で、この観音の信仰が盛んであり、会津街道の要地として人と物資の往来があり、当時の文化遺産として貴重な存在になっている。
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