ご家族で天栄村に移住し、それぞれの新たな生活を楽しんでいらっしゃる、佐々木さんご夫妻にお話を伺いました。
貞治さん
出身は千葉県の船橋市です。船橋といえば、ららぽーとやアンデルセン公園などのイメージがあると思うのですが、自分は市内でも目の前が牧場というようなところで生まれ育ったので「田舎って良いよなあ」とは移住する前から思っていました。
学生時代から就職して営業マンをしていた頃まではずっと千葉に居ましたが、趣味の料理がキッカケでお弁当屋さんを立ち上げまして、そこからは東京の江戸川区に10年程住んでいました。
天栄村には2017年の春から住んでいますが、もともと本家や親戚が福島市だったり兄も福島で生まれていたりと、福島県に全く縁が無かった訳では無いんです。
綾さん
母方の祖父が郡山出身なのですが、母は横浜出身、父は浅草生まれで、私は浅草で生まれ育ったので、主人とは正反対のいわゆる「都会っ子」だったんですね。例えばお買い物と言えばデパ地下のイメージなので、魚は当然切り身だし、野菜に土がついていることが想像できない。蛍やカブトムシはお金を払って買うものと思っていたし、霜を知らなかったりとか、それはもう、田舎暮らしを初めて体験した時は驚きの連続でした(笑)。
綾さん
私達夫婦はお互いが経営者同士なのですが、私が江戸川区に自宅を購入し引っ越した先で、近所に主人が働いていて。地域のロータリークラブなどで繋がりが出来たのが出会いのキッカケですね。
貞治さん
そうだったね。天栄村は、東日本大震災後にボランティア活動で東北へ行く機会が増えまして、その中で訪れたのが最初になります。以降、何度も家族で通うようになり、移住することになりました。妻はさっきあったように育ちが「ザ・都会」だったので、最初はカルチャーショックが多かったよね?
綾さん
うん。私は独立するまで14年間金融業界にいたので、ジーンズを履くこともなかったし、年中ヒール・スーツのような生活だったので、先ず服装が変わりましたよね。あとは校庭が土じゃなかったり、地方に比べて公園の大きさが全く違ったり。「まっすぐの道」と言われても、田舎の道って曲がってたりするので最初は意味が分からなかったりしました(笑)。
貞治さん
復興支援のボランティアは同じ福島県のいわき市に重点的に通っていたのですが、一緒に活動をしていた方に道中「天栄村のお米は本当に美味しいから!」と言われて立ち寄ったのが最初です。そこで白むすびを食べてその美味しさに本当に感動しまして、その日はご飯だけで7杯くらい食べたのかな(笑)?で、気が付いたらもうすっかり気に入って10日間くらい滞在してしまって。
綾さん
そこからの決断は本当に早かったですね。主人はその滞在中にもう地域の方に「私達この村に住みたいんですけど、どうしたら良いですか?」なんて相談したりして。移住って一生の中でもとてもオオゴトだったりするので、「そんな即決で大丈夫?」と、逆に受け入れて下さる側が心配されるくらいだったと思います。
貞治さん
確かに。その後もバスツアーを企画して家族や東京の友人知人にも天栄村に来てもらったり、月1回くらいのペース通って村の行事にも出させて頂いたりしながら、1年くらいかけて家を探したりお互いの東京での仕事を整理したりして移住に至ります。決め手は色々ありますが、最初に訪れた時から今もなお、商工会の方々をはじめ地域の皆さんが本当に我々に良くして下さったのが一番大きいですね。
綾さん
そうですね。家のことも仕事もある中、やはり子供のことは決断にあたって大きかったですが、タイミングとしては長男が中学校へ進学、次男が6年生に進級するタイミングに合わせて移住しました。結果的には子供達の方がむしろ早く天栄村の生活に馴染んで、今ではすっかり気に入ってくれているみたいで安心しています。
農業体験の様子
貞治さん
僕はもう生活はすぐに馴染んだ感じで、やっぱり田舎の生活が合ってるなって実感しました。一言で言うと「人らしい生活ができてる」なと実感する日々です。都会との違いは、まずは挨拶が多いこと!都会だと引っ越しの時にご近所挨拶なんかも敬遠される雰囲気があったりしますが、天栄村は村長さんが僕たちの事をしっかり覚えてくれていて、(移住前に)道の駅でバッタリお会いした時も、「いいお家は見つかりましたか?」と声をかけてきてくれたりしました。
綾さん
確かに東京だと、子供にも「知らない人に挨拶したらいけません」なんて言ったりするものね。私が天栄村に来て実感しているのは、便利と不便って、住む環境でその意味合いが大きく変わるんだなという事ですね。
東京では住んでいた家の目の前にコンビニがあったのですが、今はそれって本当に絶対必要?という感覚が強い。学校やスーパーや病院が一箇所になくてそれぞれ遠いというのは最初不便かなと心配していたのですが、信号のない田舎と東京は同じ車移動でも距離感が全く違うので、結果的には全然不便に感じなくなったんです。
東京時代は何をするにも時間を計算して、逆算して動く事が習慣だったけれど、今は良い意味で思いつきで動けるなって思います。全てにおいて、来る前は不便と思っていことが、住んでみたらなんてことなかったって感じですね。
貞治さん
そうそう。後は田舎の醍醐味として、毎月の「色」の違いを楽しめるというのもありますね。東京は春も冬も景色は殆ど変わらないけれど、天栄村は峠を越えると気候の差が非常に激しいので、それも含めて本当に四季折々で素敵だなと思っています。
綾さん
「『ねえねえ、あの夕焼けすごくない!?』と近所のママ友に話しかけても『そう?』って、反応が薄いんですよ(笑)天栄村では当たり前の景色なんですね」。夜は星が本当に綺麗だし、私も移住してから空をよく見上げるようになりました。
気候でいえば、日常的に冷暖房をつけることもなくなりましたし、東京の時は外出時に防犯意識からあえて電気を付けっ放しにしていたりカーテンを開けなかったりという習慣が、こっちに来てからは現地の方にすごく驚かれたりもしましたね。「誰もいないのに電気ついてるけど、大丈夫?」ってご近所さんから役場に電話がかかって来たり(笑)。
他にも、野菜に味がするのもこっちにきて初めて感じたことだし、移住する前の自分がいわゆる付き合いのための無駄な出費をどれだけしていたか実感します。ある日子供が「田舎の子って自転車で走るの遅いんだね」と言っていて、ああ、東京って本当に皆が急いで生きているんだなってことに気付きました。
天栄村の夕焼け
貞治さん
僕は、本当に無いんですよねー。(綾さんに向かって)何かあるかな?
綾さん
私もさっき言った通り今不便に感じることは殆ど無いけれど、唯一あげるとすると道ですね!都会と違って看板などの目印も無いし、田舎は走っても走っても同じ景色が続くので(笑)、私はカーナビが無いと本当に何処にも行けないなって思います。
貞治さん
そういえば、(村内に音声で流れる)放送は便利だよね。
綾さん
そうそう!あれのお陰で子供を起こさなくて良いから助かってる。
貞治さん
私は移住を機に天栄村内に会社を登記して、東京時代に引き続きデザイン関係の仕事を行っています。その他の仕事は東京で引き継いできましたし、ガンガン稼ぐというよりは、家族でちゃんと生活していければOKというスタイルに変わったかなって思います。
綾さん
私も仕事のスタイルは大きく変わりました。都会では仕事を頂くための営業経費が物凄く高かったと思うのですが、天栄村に来てからは売上が減っても経費がそれ以上に減ったので、意外と利益は変わらない感じです。人の繋がりというか、有難いことにそこまで営業をしていなくても仕事が降って来るような状況になっていたりします。
綾さん
教育は丁寧ですよ。学校での教え方が全然違うって思います。やっぱり1クラスに生徒の数が多過ぎると、先生は見きれない部分もあると思うんですよね。あとは部活動、特に運動は盛んな印象ですね。
貞治さん
子供の数が都会の学校に比べて少ないからこそ、1人の子供に対して教育が手厚いところもあるんだと思います。英語教育なんかも熱心で、Skypeを外国と繋げて英会話を実施していたりもするんですよ。一方、天栄村も人口は減り続けていて、村としての今後に向けた課題は大きいと思います。その中でも個人的には、村に高校が出来たらなって思います。高校生で一番多感な時期に進学で村の外に出て行ってしまうと、殆どがそのまま帰ってこなかったりしますしね。
個別英会話レッスンの様子
2017年8月には天栄村でカフェ「溢れる家」をオープンしました。「天栄村のおいしいお米や野菜をもっと知って欲しかったのと、東京で人気の洋服やアクセサリーが買えるお店もあるといいな」と、天栄村のお米や野菜を使用したランチプレートや東京から仕入れる洋服や雑貨等いろいろと取り揃えてられており、楽しく、過ごしやすい場所を提供しています。また、現在はワンコイン弁当の配達サービスの提供もしています。
綾さん
「小学校も近いので、ママ友のたまり場的な場所になったらいいなとも思っています」と、子育てする母の視点でも創られています。
貞治さん
移住で言うと、やっぱり旅行だけではなかなかわからない部分もあると思うので、その土地の人と会ってみることが一番大事かなって思います。私自身お試し住宅やツアー等の企画が本格的な移住検討の後押しになったのですが、そうした制度等も活用して田舎町のことをよく知るっていうのがオススメですね。
綾さん
私は東京の人にこそ天栄村に来て欲しいなって思います。田舎は人が少ないので、雰囲気的に引っ込み思案な人も多い印象があるのですが、ずっと都会育ちだった私が身をもって日々感じている移住生活から、こんな生き方もあるんだよって直接伝えたいですね。何だったらうちに電話してくださいって感じです(笑)。
溢れる家<外部リンク>
氏名:佐々木 貞治(さだはる)さん・綾(あや)さん
職業:自営業
出身:千葉県(貞治さん)・東京都(綾さん)
世帯構成:夫・妻・子2人
趣味:仏閣巡り